VMO値で考える。なぜあなたの事業は成長しないのか。
事業が成長しないとき、多くの会社は「もっと売ろう」「広告を増やそう」と考えます。
しかし、本当に見るべきなのは売上ではなく、その会社が成長できる構造になっているかではないでしょうか。
そこで私は、事業の成長力を3つに分けて考えています。
V:Value=事業価値
M:Management=経営・管理能力
O:Operation=現場遂行能力
そして、VMO値 = V × M × O
と考えます。
ここでは1.0を現状維持の水準とし、環境変化や競争まで考えると、継続的な成長には1.1以上が必要だと定義します。
これは学術的な経営指標ではなく、事業の状態を考えるための独自フレームワークです。
V|なぜあなたから買うのか
VはValue、事業価値です。
商品力、ブランド、価格、技術、ノウハウ、信用、顧客との関係など、「なぜ他社ではなくあなたから買うのか」を表します。以前は強みだったものでも、競合が真似をすれば価値は下がります。
つまりVは、一度作れば終わりではありません。
事業価値は常に陳腐化します。
M|正しく、速く意思決定できるか
MはManagement(マネージメント)です。
キャッシュフロー管理、MQ会計、利益管理、人員配置、投資判断、価格設定、撤退判断、権限委譲などが含まれます。管理職のマネジメント能力もここです。
特に重要なのが意思決定の速度です。
同じ情報を持っていても、3か月後に動く会社と、1週間で動く会社では結果が変わります。
Mとは、
必要な情報を集め、判断し、素早く組織を動かす力
です。
O|現場からムダをなくせているか
OはOperationです。
5S、7つのムダの削減、標準化、マニュアル化、自動化、ミス削減、属人化の解消などがここに入ります。
「探す」「待つ」「やり直す」「同じ入力を繰り返す」といった時間は、価値を生まない労働です。
管理職が「どう動かすか」を決めるのがM。
実際に現場がムダなく動ける状態を作るのがOです。
従業員が100働いても、成果が100になるとは限らない
VMOを掛け算で考える理由はここにあります。
例えば、あるスタッフが会社に100の労働力を提供したとします。
しかし、
V=0.9
M=0.9
O=0.9
なら、
100 × 0.9 × 0.9 × 0.9 = 72.9
です。
本人は100働いているのに、会社として生み出せる成果は72.9しかありません。
逆に、
V=1.2
M=1.1
O=1.1
なら、
100 × 1.2 × 1.1 × 1.1 = 145.2
になります。
同じ100の労働でも、会社の仕組みによって成果は約2倍違います。
ここで重要なのは、従業員の能力だけを見ても意味がないということです。
「もっと頑張れ」と言う前に、
その100の労働力を会社側が目減りさせていないか
を見る必要があります。
VMO値は従業員満足度にもつながる
さらに、会社が生み出した成果の一部は給与や賞与として従業員へ分配されます。
つまり単純化すれば、
従業員への還元 = 労働力 × VMO値 × 労働分配率
と考えることもできます。もっと言えばここからさらに税金が引かれて手取りです。
VMO値が低ければ、会社に十分な利益が残りません。
利益が残らなければ、給与を上げることも、賞与を増やすことも、人員を増やして負担を減らすことも難しくなります。
一方、VMOが高ければ、同じ人数、同じ労働時間でもより大きな成果を生み出せます。
そこから適切な労働分配が行われれば、
給与、賞与、休暇、人員配置、設備投資、働きやすさなどに還元できます。
つまり従業員満足度は、福利厚生だけの問題ではありません。
会社が労働力を価値に変換する能力そのものが、従業員満足度にも影響する
ということです。
どの数字を上げやすいかは会社によって違う
ここで重要なのは、V・M・Oはすべて同じ難易度で上げられるわけではないことです。
会社によって、上げやすい数字と上げにくい数字があります。
例えば小さな会社なら、経営者が直接判断できるため、Mは上げやすいかもしれません。
一方で人員や資金が少なく、設備投資や大規模なシステム化が難しければ、Oには限界があります。
逆に大企業なら、資金や人材を使ってOを改善しやすい反面、組織が大きいため意思決定に時間がかかり、Mを上げることが難しい場合があります。
長年営業している会社なら、信用やブランドによってVが高いかもしれません。
新しい会社はVを作るまで時間がかかる一方、古い仕組みに縛られていないためMやOを一気に高められる可能性があります。
つまり、
すべてを均等に上げようとする必要はありません。
自社にとって、
「どこなら少ない投資で大きく上げられるのか」
「どこが成長のボトルネックになっているのか」
を見極めることが重要です。
VMOは点数を付けるためだけではなく、限られた経営資源をどこへ投入するかを考えるための指標でもあります。
AI時代、MとOは急速に上がる
AIによって、MとOは大きく改善できます。
データ分析、市場調査、資料作成、議事録、マニュアル作成、問い合わせ対応、プログラミング、エージェントによる自動化。
これまで人が時間を使っていた仕事の多くをAIが補助できるようになりました。
つまり、
AIでOを効率化し、AIでMを高速化する
ことが可能になっています。
しかし問題があります。
競合もAIを使えるということです。
AIでOを1.3まで上げても、周囲も1.3になれば、それは強みではなくなります。
送り状伝票をプリンターで印刷したからといってあなたの会社は他社より優位に立てているでしょうか??
AIはVMOを上げますが、同時にVMOが陳腐化する速度も上げます。
AI時代ほどVが重要になる
誰でも文章を書ける。
誰でも画像を作れる。
誰でも分析できる。
誰でも簡単なシステムを作れる。
そうなったとき、最後に残るのは、
「なぜあなたから買うのか」
というVです。
だからAI導入そのものを目的にしてはいけません。
理想は、
AIでOを効率化する。
AIでMを高速化する。
そこで生まれた時間と利益をVに投資する。
という流れです。
そもそもVMO値が低ければ、スタッフはあなたにAI有効活用を提案してこないかもしれません。
成長企業とは、VMOを更新し続ける会社
VMO値は固定ではありません。
競合が進歩する。
技術が変わる。
市場が変わる。
組織が大きくなる。
何もしなくてもVMOは少しずつ下がります。
だから強い会社とは、VMO値が高い会社ではなく、
下がっていくVMOを、何度でも1.1以上へ戻せる会社
だと考えます。
売上が伸びないとき、広告を増やす前に考えてみる。
Vが弱いのか。
Mが遅いのか。
Oにムダがあるのか。
そしてもう一つ。
スタッフが提供してくれた100の労働力を、会社は100以上の成果に変えられているか。
そこまで考えると、VMOは売上だけではなく、利益、事業価値、そして働く人の満足度までつながる指標になるのではないでしょうか。


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